12月に読んだ本

12月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:1231
ナイス数:319

酒呑童子 (京の絵本)酒呑童子 (京の絵本)感想
この鬼の迫力、お寺の仁王さんが恐くて目を離せなかった幼い頃を思い出す。注意を逸らした途端に食いつかれそうな気がするのだ。刎ねられた首が宙を舞う場面はヒヤリとしたし、槍に挙げられた首級もまだ暴れだしそうで恐い。様式化された四天王や仙人たちと比べても、この鬼だけが取り立ててオリジナルな訳ではない。昔からある型を利用しながらのこれは、深い古典理解と画力と情熱の合わせ技か。お話はお馴染みなので割愛、舟崎さんの文章はやや語りにくさを覚えた。酒呑童子の出自としては、八岐大蛇の息子説がお気に入りです。お酒にはご注意を!
読了日:12月03日 著者:舟崎 克彦,梅原 猛
森のプレゼント森のプレゼント感想
「大きな森の小さな家」からクリスマスのエピソードを抜き出し、安野光雅が素朴で小洒落た挿画を施した愛らしい本。絵本というよりは短めの児童書かな?初読の昔と変わらず、雪の上に糖蜜を垂らして作るキャンディにはうっとり。父さんが丁寧にヤスリがけして仕上げる細工棚と、母さんが次から次へと焼くクッキーやパン。しっかり手伝った後は味見もさせてもらい、あとは邪魔にならないように遊ぶ子どもたち。年越し準備の慌ただしさと高揚感が、砂時計の砂を数えるように眩しくて切ない。胸の痛くなるような暖かさと愛に満ちた小さなお話。
読了日:12月03日 著者:ローラ・インガルス・ワイルダー
祇王・仏 (京の絵本)祇王・仏 (京の絵本)感想
文章は整っているものの、語るには一文が長く文章量も多め。絵ははじめ明るすぎるように感じ、無常を悟り出家する女たちの物語には不似合いに思えた。内容は「平家物語」で既読の部分。今回は清盛の横暴よりも、祇王の母親を身勝手に感じて苛立った。けれど語られない出家後は、妄執から解き放たれた女四人で案外平穏に読経の日々を送ったのかもしれない。そう思えばこの画面の妙な明るさも少し違って見えてくる。過去帳の下りを読み清盛のその後を思うと、一足先に尼となって俗世を離れた彼女たちこそが賢かったのだと思えてくる。
読了日:12月03日 著者:村中 李衣,梅原 猛
絵本の力絵本の力感想
本書のおかげで松居直という、日本の絵本を世界に誇れるほどにまで育て上げた、偉大な編集者の存在を知ることができた。曰く、絵本は読むものではなく、語り聞かせてもらうものである。絵を見ながら耳で話を聞き、想像の中で子どもは絵本を完成させる。文字の読めない子どもは絵を読む、絵も言葉なのだ。音ではなく声を聞き、絵を読んで言葉を蓄えた子どもは、長じて本との良好な関係を築く。彼の「役に立つ絵本は作らない」というスタンスも嬉しくなる。下心のある本を子どもは敏感に嗅ぎ分けるから。ここにある子どもとは、息子であり私でもある。
読了日:12月04日 著者:河合 隼雄
鬼滅の刃 9 (ジャンプコミックス)鬼滅の刃 9 (ジャンプコミックス)感想
禰豆子が箱から出てこない寂しさを墮姫ちゃんで補う巻。吾峠さんの描く女体は厚みがあって魅力的、墮姫は衣装も素敵。女装潜入作戦はベタだけど楽しそうなのに、駆け足すぎて半端に過ぎた感が惜しい。確かにこのハイテンポが鬼滅なんだけども。炭治郎の変顔には笑いと愛しさが同時にこみ上げて困った。嘘つくの辛いよね。宇髄さんは音柱だから、ゆくゆく善逸が継子になるのかしら。喧嘩するほどの師弟仲で上手くいきそう。蕨姫の横暴に抗議する善逸は格好良かった。宇髄さんは元忍びなのに派手好きなのはともかく、三人の嫁を受け入れる懐に感服。
読了日:12月07日 著者:吾峠 呼世晴
あおいジャッカルあおいジャッカル感想
【3歳1ヶ月】原典は世界最古の児童書、インドの「パンチャタントラ」。画と再話は「三びきのやぎのがらがらどん」のマーシャ=ブラウン。木目の浮く荒々しい木版の、鑿音がそのままジャッカルの声になりそうな彫り痕。インドでは神の色とされる青も、ここでは神秘よりも褪せた野性の物哀しさを感じる。絵の力強さと動物たちの登場に惹かれてか、私のために借り出してきた本書を先に気に入ったのは息子。展開はシンプルだけど言葉がやや心もとないので、随時意訳しながら読む。思っていたほど教訓めいて感じなかったのは、マーシャの絵のおかげ。
読了日:12月10日 著者:マーシャ・ブラウン
スタープレイヤー (単行本)スタープレイヤー (単行本)感想
恒川さん9作目にして初の不発、辛口注意。まずこれは好みの問題だけど、現代×異世界×10の願いという世界観になかなか馴染めずに苦労した。導入部分での解説はゲームかラノベのようでさらに違和感。肝心の10の願いそのものも最後まで意外性がなく、面白味を感じなかった。いつもは好きな恒川さんの平易で淡白な文体も、今回は裏目に出たように思える。後半の戦争の描写にまったく緊迫感がなかった。着地点もさらりと流れて何も残らない。楽しく読んだのはフーリッシュサークルの辺りで、ベタながら自分なりの10の願いを考えてしまった。
読了日:12月15日 著者:恒川 光太郎
ソルビム―お正月の晴れ着ソルビム―お正月の晴れ着感想
余白の美しい端整な構図、筆あとの柔らかさ、艶やかな色遣い、何よりこの女の子の愛らしさ!額や後頭部の丸み、ちまちました指先の反り、俯き加減で輪郭をはみ出す上くちびる。内容は至ってシンプルで、お正月の晴れ着を自力で着付けようと奮闘する、小さな女の子の姿が軽やかに描かれている。色鮮やかな衣装、刺繍が施された小物類、金箔きらめく髪飾り。細やかに描き込まれた調度たちも、画面にあるもの全てが女の子の浮き立つ気分を語り始める。おめでたい日の特別なおめかしと、そこに込められた様々な願い。どこの国も同じだなあ。
読了日:12月15日 著者:ペ ヒョンジュ
ソルビム〈2〉お正月の晴れ着(男の子編)ソルビム〈2〉お正月の晴れ着(男の子編)感想
女の子編よりも背景ありの画が多かったように思うのは気のせいかしら。クオリティの素晴らしさは変わりません。男の子編の主人公は、あの女の子の弟くん。お雑煮たくさん食べてお姉ちゃんの歳を追い越しちゃうんだって。ひとつひとつの小物を確かめながら、間違ってはやり直し、時には凧を持ち出して遊んだりして、どうにか着付けを完成させます。男の子の衣装では、やはりホゴン(虎頭のついた頭巾)がとても可愛い。図書館での受け渡しの際、司書さんに「表紙の子、坊やにそっくりね!」と言われて嬉しかったことを添えておきます(*´∀`)
読了日:12月15日 著者:ペ ヒョンジュ
Under the Rose (9) 春の賛歌 (バーズコミックス デラックス)Under the Rose (9) 春の賛歌 (バーズコミックス デラックス)
読了日:12月28日 著者:船戸 明里
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読了日:12月29日 著者:船戸 明里

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