中沢新一

人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ(1) (講談社選書メチエ)

本書を読んで、絵本「モカシン靴のシンデレラ」を思い出した。あちらの作者も中沢先生だったのね。表題の「人類最古の哲学」とは神話のこと。だから哲学めあてに読むと期待の斜め上を行っちゃうかも。記紀ファンの私は正直シンデレラにあまり興味はなかったけど、神話として読み解いていく過程でそんなこだわりは吹っ飛んだ。たいへん面白く、かつ読みやすくてわかりやすい良書でした。

熊から王へ カイエ・ソバージュ(2) (講談社選書メチエ)

首長から王への下りを読んだ時、思い浮かんだのは日本。天皇はシャーマン(祭祀王)であり、日本の元首=最高の権威。一方で権力を握ってきたのは将軍や政治家(古代では天皇=大王が権力を持っていたこともあるけど)。権威と権力が分離したまま現代に至った日本の歴史は稀有だと何かで読んだことがあるけど、今さらながらそれを納得。前巻よりとても面白かったので、次巻にも期待できそうで嬉しい。

愛と経済のロゴス カイエ・ソバージュ(3) (講談社選書メチエ)

いまいちピンとこなかった純粋贈与、つまり「恵み」のことなのかと思ったらストンと落ちた。贈る側も受け取る側もそうと意識しないのが理想、というのはわかる気がする。中島敦「名人伝」を思い出した(至為は成すなく至言は言を去り至射は射る事無し)。マルクスにまで手を出す根性はないけど、資本主義に隠された価値増殖のトリック(労働力の交換価値を使用価値に代理表象させる)にははっとさせられた。これは忘れないでおこう。キリスト教との絡みは不勉強で食い足りなかった。

神の発明 カイエ・ソバージュ〈4〉 (講談社選書メチエ)

面白かった!鵜呑みにしてはいけないと肝に命じつつ、なるほどと思わされることが何度も。シリーズで繰り返される、現世人類の脳に起きた革命と、そこに産まれた「超越性」・・・多神教宇宙から飛び出た一信教。メビウスの帯のトポロジーははじめこそピンとこなかったけど、トーラスと合わさるとわかりやすさに納得。前巻で扱われたキリスト教と資本主義の絡みにも捕捉があって有り難かったです。次はついに最終巻。メモしながら読めばよかったと今さらながら思う。

対称性人類学 カイエ・ソバージュ 5 (講談社選書メチエ)

シリーズ各巻の内容をまとめながら、これからの対称性人類学が目指すべきものを洗い出していく最終巻。ここにきて流動的知性=無意識の図式が示され、もろもろ腑に落ちた。つまみぐいせずに順を追ってきて正解だった・・・けど、さっそく初めから読み返したくなってきた。対称性人類学の立場から見た思想としての上乗仏教が気になるけど、素人には厳しいかなぁ。。。

三万年の死の教え―チベット『死者の書』の世界 (角川文庫ソフィア)

簡単な内容ではないけどテーマを絞ってあるので読みやすかった。インドで生まれた仏教が土着の神々を呑み込みながらシルクロードを下ってきたという認識はあっても、呑み込むとはどのようなことか具体的に考えてみたことはなかった。チベットについても、何やら信心深く神秘的な人々が住まう国、くらいの貧弱なイメージ。本書では、チベットには仏教に先んじて古来より独自の思想哲学があり、仏教思想が持ち込まれたときふたつが影響し合って今に至る、その過程を解説していて、やっとピンときた感じ。著者の「神の発明」を思い出した。

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